「変われない」を変える方法〜【スイッチ!】より

人はより良い変化を望むものであり、同時に変化を拒むもの
身体においても、仕事でもプライベートでも、人はより良い変化を望むものではないでしょうか。
一方で、現状に流され、なかなか変化を起こせず悶々としている人も多いかと思います。
(自分もその1人です。汗)
たとえば年末になると、今年の振り返りとか来年の目標など、自分自身や仕事などの変化と向き合い機会も増えるかと思います。
「より良く変化しよう」という願いは、人間の自然な欲求だと思っています。
そんな「変化」について、とても分かりやすく書いている本を見つけましたのでご紹介します。
この本は偶然手に取って読んでみたのですが、思わず即決で買ってしまったものでした。
といっても、実質無料だったんですけどね。笑
— 大森 剛@身体のシステムエンジニア (@largeforest_t) November 26, 2017
「変化の起こし方」について豊富な具体例とシンプルなフレームワーク
タイトルの通り「変化の起こし方」についていくつもの具体例を挙げていて、予想通り素晴らしい本でした。
本書で語られている変化は、個人的なもの、国家レベルの大きい組織に至るまでの幅広い変化に応用できるものです。
このブログでは、大森が感銘を受けたものを抜粋して挙げてみます。
今回のブログは、本書で語られていることの汎用性がとても高いと感じたため、
自分自身の変化や、他者の変化を考えるにあたり、引用するための資料としての意味合いもあります。
そのため、とっても長文になりました!(申し訳ありません!)
お時間のある時にお読みいただければと思います。(^_^;)
この中にひとつでもお役に立つものがあれば幸いです。
また、この投稿ではお伝えしきれないくらいたくさんの事例と学びを得られる本だと思いますので、ぜひオススメしたいです。(新版もあります)スイッチ!
この内容についてご興味を持った方。
ぜひ一緒にディスカッションしましょう!(^-^)
目次
- (ページ先頭)
- 象と象使いの例えについて
- 抵抗しているように見えても、実は戸惑っている場合が多い
- セルフコントロールは消耗資源
- 象使いに方向を教える。象にやる気を与える。道筋を定める。
- 「ブライト・スポット」=お手本、成功例
- 「真実だが役に立たない(トゥルー・バット・ユースレス)」
- 「分析麻痺(アナリシス・パラリシス)」と「意思決定の麻痺(ディシジョン・パラリシス)」
- アイデンティティは人生の中で「取り入れていく」もの
- やる気を保ち続けるには、失敗を覚悟すること
- 問題は大きくとも、解決策は小さい。
- 人間の問題に見えても、実は環境の問題~「根本的な帰属の誤り」
- 人は変化に抵抗するもの?
- 変化には一定のパターンがあり、パターンが存在しないのは変化を成し遂げる人たちのタイプ
- 「象と象使いと道筋」に置き換えて、色々考えてみる(大森考察)
象と象使いの例について
脳は常に2つのシステムが独立して働いています。
1つは「感情」で、苦痛や快楽を感じる人間の本能的な部分。
もう1つは「理性」で、意識的であり、じっくりと考え、分析を行ない、未来に目を向ける部分。
この2つのシステムの葛藤を本書では「象と象使い」にたとえて説明しています。
感情が「象」であり、理性は「象使い」です。
以下、本文より「象と象使い」についての説明を抜粋します。
象にまたがって手綱をつかむ象使いは、一見するとリーダーに見える。
しかし、象使いの精度は不安定だ。
象使いは象と比べればはるかに小さいからだ。
体重6tの象と象使いが進む方向でもめれば、負けるのは象使いだ。
象使いには全く勝ち目がないのだ。
私たちの象、つまり感情や本能の弱点は明らかだ。
長期的な報酬よりも短期的な報酬に目を奪われてしまう。
変化がうまくいかないのはたいてい象のせいだ。
なぜなら、何かを変えるためには長期的な報酬のために短期的な報酬を犠牲にしなければならないことが多いからだ。
目の前の満足を求める象の欲求は、象使いの強みとは正反対だ。
象使いの強みとは、長期的に考え、計画を練り、先を見据えていることだ(いずれも象には苦手なことだ)。
しかし、象には大きな強みがあり、象使いにも致命的な弱みがある。
重要なことだが、変化を起こそうとしている時、それを実行に移すのは象だ。
立派な目標であれくだらない目標であれ、目標に向かって突き進むには、象のエネルギーと勢いが必要だ。
そして、この象の強みとは対照的なのが象使いの大きな弱みだ。
象使いは頭を空回りさせてしまう。物事を分析しすぎたり考えすぎたりする傾向があるのだ。
何かを変えたいなら、象と象使いの両方に訴えかけるべきだ。
象と象使いが協力して動けば、たやすく変化を引き起こせる場合もあるのだ。
とても良く例えられていると思います。
本書に登場する事例は、この「象と象使い」で説明されているのが分かりやすく面白いところです。
以下、本書に書かれていたキーワードの中から、大森が感銘を受けたものをピックアップしながら、
「象と象使い」についての理解を深めていきたいと思います。
抵抗しているように見えても、実は戸惑っている場合が多い
感情=象に訴えることで状況は変わります。
やる気のない象が変化の邪魔になることもありますし、象使いにも象使いなりの問題があります。
多くの方がご存じであり、実感されていることだと思いますが、
象使いは頭を空回りさせがちです。
象使いが進む方向に迷えば、象はその場をぐるぐる回ってしまいます。
この象使いの性質から「変化」に対する意外な事実がわかります。
つまり【抵抗しているように見えても、実は戸惑っている場合が多い】ということです。
象使いを迷わせず変化させるためには、とびきり明確な指示を与えておかなければならないのです。
この、とびきり明確な指示こそが、後述の「変化のための3つのフレームワーク」の最後の1つ【道筋を定める】になります。
セルフコントロールは消耗資源
象と象使いがもめれば、問題が生まれます。
象使いは、しばらくは思い通りの方向に進めるかもしれません。
手綱を力強く引っ張り、象を無理やり従わせればいいからです。
「意志力」を使うときは、まさにそうしているでしょう。
しかし、相手は巨大な動物です。
象使いはいつまでも綱引きで勝ってはいられません。
いつか力尽きてしまうからです。
本書では「焼きたてのチョコチップクッキーとダイコン」の実験でユニークにこのことを説明しています。
とてもユニークな実験なので、ぜひ本書を読んでいただきたいです。(^-^) スイッチ!
簡単に書くと、ガマンを強いられた人は、そうでない人よりも忍耐が弱くなる実験です。
誘惑に耐えること、判断力や意志力を使うこと、試行錯誤を繰り返すこと、などは全て「セルフコントロール」です。
そして、この「セルフコントロール」は消耗資源である、ということを示しています。
このセルフコントロールは幅広い意味での自己管理を指しています。
たとえば、スタッフに否定的なフィードバックを返すとき、新しい本棚を組み立てるとき、新しいダンスを習うとき、
頭がどう動いているかを考えてみると、まるで管理者がそこにいるかのように、言葉遣いや動作に注意深く慎重になるはずです。
それもセルフコントロールのひとつです。
管理されている行動と、そうでない行動
これを〝管理〟されているとは感じない行動と比べてみるとわかりやすいです。
たとえばどこをどう走ってきたのか思い出せないほど夢中で運転しているときの感覚。
あるいはシャワーを浴びたり、朝のコーヒーを淹れたりする無意識で何気ない行動。
実際、日常の行動の多くは、管理されているというよりも、自動で行われていて、
そして、これは良いことです。
行動を管理するのは骨が折れ、疲れます。
疲れると動きたくなくなるのは、身体も感情も同じです。
セルフコントロールを消耗しているとき、人々がすり減らしているのは心の筋肉。
怠けているように見えても、実は疲れきっている場合が多いのです。
象使いに方向を教える。象にやる気を与える。道筋を定める。
ここで、具体的な変化のためのフレームワークをご紹介します。
象使いに方向を教える。
抵抗しているように見えても、実は戸惑っている場合が多い。
したがって、とびきり明確な指示を与えよう。
象にやる気を与える。
怠けているように見えても、実は疲れきっている場合が多い。
象使いが力づくで象を思い通りの方向に進められるのは短い間だけだ。
したがって、相手の感情に訴えることが重要。
象に道を歩かせ、協力してもらおう。
(管理されているとは感じない行動をうながそう)
道筋を定める。
人間の問題に見えても、実は環境の問題であることが多い。
状況や環境、つまり本書おける「道筋」を定めることで、象使いや象の状態にかかわらず、変化を起こしやすくなる。
この3つの要素から成るフレームワークが、行動を変える際のガイドラインになります。
フレームワークの練習「クリニック」
本書では「クリニック」というタイトルで、さまざまなケースにこのフレームワークを当てはめて考えるコラムがいくつか掲載されています。
とても実用的な内容ですので、ぜひ本書をお読みください。スイッチ!
ブライト・スポット=お手本、成功例
あらゆる問題には「うまくいっている例外」があります。
問題が山積みだと思っていても、ある一部分、あるケース、少数の人々だけがうまくいった例、お手本にすべき例はあるものです。
それを本書では「ブライト・スポット」と呼んでいます。
その例外をいったん把握すればじっくりと分析できます。
「うまくいっていたときは何が起こっていたか?」
「どう行動していたか?」
すると、解決策が直接浮かびがってきます。
その解決策は実際に効果があったものなので、そもそも実行可能なものなはずです。
象使いには多くの強みがあります。
思考者でもあり計画者でもあり、未来への道筋を練ることもできます。
しかし、致命的な弱点もあります。
頭を空回りさせるという性質です。
象使いは思考や分析が好きで、さらに悪いことに、分析はたいてい「ブライト・スポット」ではなく「問題」の方を見てしまいます。
たとえば恋愛について何時間も悩む友人と会話を交わしたことがあるはずだ。
しかし友人が「なぜこんなにうまくいくのだろう?」
とたった数分間でも分析している瞬間に出くわした経験はないだろう。
問題の根源など、過去を掘り返すのではなく、
解決策は「ブライト・スポット」にあるのです。
「真実だが役に立たない(トゥルー・バット・ユースレス)」
ベトナムの子どもの栄養不足問題について、多くの文献よると「さまざまな問題がからんでいる」というのが一般的な考えであった。
公衆衛生が乏しく、貧困が蔓延。清浄水は普及しておらず、地方の人々は栄養に無知。
しかし、これらの知識はすべて「真実だが役に立たない(トゥルー・バット・ユースレス)」であり、
解決策は一部の栄養不足でない子供達の親が行なっていた行動=ブライト・スポットにあった。
このベトナムの貧困と栄養不足の例も素晴らしい内容なのでぜひ本書を読んでいただきたいです。スイッチ!
問題解決に向けてさまざまな分析をすればするほど、この「真実だが役に立たない(トゥルー・バット・ユースレス)」が増えていくのかもしれません。
そして次に項目の「分析麻痺(アナリシス・パラリシス)」に襲われるのです。
「分析麻痺(アナリシス・パラリシス)」と「意思決定の麻痺(ディシジョン・パラリシス)」
象使いが陥りやすい状況を「分析麻痺(アナリシス・パラリシス)」と呼んでいます。
あちこちに問題を見つけ、頭が空回りして動けなくなる状態です。
似たような言葉に「意思決定の麻痺(ディシジョン・パラリシス)」というのもあり、
選択肢が増えると、選ぶというセルフコントロールを消耗するので、選択することを諦め、凍りついてしまう傾向があります。
困難な状況に直面すると、象使いはそこかしこに問題を見つける。
そして、多くの場合は「分析麻痺(アナリシス・パラリシス)」に襲われてしまう。
はっきりと方向が定まるまでは、象使いはずっと頭を空回りさせ続けるのだ。
人間は選択肢が増えると、それがどんなに良い選択肢であっても、私たちは凍りつき、最初の計画に戻ってしまう。
象使いは、選択肢を与えられるほどに疲労していく。
(セルフコントロールは消耗資源だからだ)
なぜ現状が心地よく安定していると感じられるのか。
それは、選択肢の多くが切り捨てられているからだ。
誰にでも習慣、つまり自分のやり方がある。
象使いは、1日の大半は自動運転で動いている。
しかし、変化の時期には、自動運転はもはや通用しない。
変化は新たな選択肢をもたらし、不確かさ、曖昧さを生み出す。
曖昧さは象使いを疲れさせる。
変化を先に進めるには、象使いに「方向を教える」必要があり、
変化を起こそうとしているとき、象使いに道を案内するこの上ない希望となる。
多くのリーダーが、大まかな方向性を定めて満足している。
全体的で放任的なリーダーシップは、変化の場面ではうまくいかない。
変化の最も難しい部分、つまり麻痺を引き起こす部分は、まさに詳細の中にあるからだ。
変化を成功させるには、曖昧な目標を具体的に置き換えることが必要だ。
変化を起こすには「大事な一歩の台本を書く」ことが必要なのだ。
頭が良い人ほど、この「分析麻痺(アナリシス・パラリシス)」と「意思決定の麻痺(ディシジョン・パラリシス)」に陥りやすいのではないかと思います。
変化を起こすのは「象」です。
人は知識では動かず、感情で動くものです。
象使いの空回りでは問題は解決しないのですね。
この「象と象使い」のフレームワークが多くの教訓に意味を与えてくれています。
アイデンティティは人生の中で「取り入れていく」もの
アイデンティティを養うことで成功した事例がいくつか紹介されています。
詳しくは本書をご覧ください。(これもユニークなアイデアです)スイッチ!
「アイデンティティを養う」というと、少し違和感があるかもしれません。
一般的に「アイデンティティ」といえばなんらかの普遍な性質を指しているからです。
人種、民族、地域などのアイデンティティ。
しかし、それはこの言葉の狭い使い方にすぎなく、
私たちは母や父、友人や恩師などを真似て、学び、養われ、アイデンティティを取り入れていくのです。
意思決定は「結果」か「アイデンティティ」で行われている
人は選択を下すとき、意思決定の2つの基本モデルのいずれかに頼る傾向があるといいます。
それは「結果」モデルと「アイデンティティ」モデルです。
結果モデルは「決定を下すとき、人は選択肢の費用と便益を評価して、満足度が最大になる選択を行なう」と仮定しています。
これは合理的で分析的なアプローチであり、当然のような意思決定の方法と思われます。
一方、意思決定のアイデンティティ・モデルでは、基本的に3つの疑問を投げかけます。
- 自分は何者か?
- 自分はどのような状況におかれているか?
- 自分と同じ状況にいる人々ならどんな行動をするか?
ポイントは、費用と便益の分析が抜けている点です。
一見合理的な選択肢が選ばれない理由は、感情はアイデンティティに基づくものが多いからです。
合理的な理由があっても、アイデンティティを無視しては感情は動かない
人を管理したり指導・指示する立場の人は、この項目はとても重要です!
いくら合理的な理由があったとしても、相手のアイデンティティを無視していたら、決して良い結果は生まれないでしょう!
アイデンティティに訴えることで、人の感情は大きく動かされます。
そして、感情は「象」なので、力強く変化を促してくれます。
しかし、問題は新しいアイデンティティに従って行動するのはとても難しいようです。
新たな冒険には必ず失敗の瞬間があるからです。
「象」は失敗が嫌いなのです。
その解決策が次の項目である「やる気を保ち続けるには、失敗を覚悟すること」です。
やる気を保ち続けるには、失敗を覚悟すること
変化を起こそうとするときには(特にアイデンティティの変化が含まれる場合には)自分自身や相手に必ず失敗の瞬間があります。
そして、象は失敗することが何より嫌いです。
これこそが自分や相手を変えようとしているときに困難をもたらす要因になります。
私たちは、自分や相手が失敗すれば「逃走」本能が湧き上がることを知っています。
しかしそれでは、長く危険な道のりを目の前にして、象のやる気を保ち続けるにはどうすれば良いでしょうか?
その答えは、失敗を「覚悟」することだ。
それは目標そのものの失敗ではなく、道中での失敗です。
脳や能力は鍛えられる
変化の時期には、自分自身や相手に何度も言い聞かせなければならない基本的な事実があります。
脳や能力は筋肉と同じで、練習すれば鍛えられるということです。
私たちは初めから何者かで生まれてくるわけではなく、方法や手法を学び、
そのアイデンティティに従って生きたいという願いが、自分自身を変える意欲につながるのです。
変化で最も難しいのは、象を前進させ続けること。
象使いに必要なのは方向性だが、象に必要なのはやる気。
そして、そのやる気は感情から生まれる。
知識では変化を起こす意欲は生まれない。
しかし、やる気は自信からも生まれる。
したがって、象は自分が変化を「乗り切れるという自信」を持つ必要がある。
問題は大きく、解決策は小さい。
本書で繰り返し取り上げられているテーマに「問題は大きく、解決策は小さい」というのがあります。
象使いが問題を分析するとき、それに見合う大きさの解決策を探そうとする傾向にあるそうです。
しかし、小さな解決策の積み重ねによって解決されることが多いと本書では結論づけています。
そして、この「非対称性」こそ、象使いの分析好きが裏目に出やすい理由なのだそうです。
(身に覚えがありすぎでした。^_^;)
「真実だが役に立たない(トゥルー・バット・ユースレス)」の項で挙げたベトナムの栄養不足の事例でも、
それを分析していた専門家は、その原因となっている大規模な制度上の問題を徹底的に分析した結果、
公衆衛生の欠如、貧困。無知。水不足などの問題点を指摘し、さらに問題を解決するために、大規模な制度上の計画を立てたそうです。
しかし、それは夢物語に過ぎず、
実際に解決した人だけが「今うまくいっている部分(ブライト・スポット)は?」と問いかけたのだそうです。
実際の解決策は、食事の頻度だったり、積極的に子どもに食事を取らせたり、一般的に子供が食べないされていたエビやカニなど近くに生息する動物や植物を与えることでした。(すべて身近なものだった!)
「できること=ブライト・スポットから始める大切さ」は、こういうところにあるのですね。
人間の問題に見えても、実は環境の問題である~「根本的な帰属の誤り」
本書の冒頭に出てくる実験の話。
映画館でポップコーンを観客に配ります。
2つのグループのうち一方にはMサイズの容器に入ったポップコーンを渡し、
もう一方にはバスタブ型の特大Lサイズ容器のポップコーンを渡した。
どちらの容器も大きく食べきれないくらいだったのだが、Lサイズの人々はMサイズの人々より半分以上も多く食べていたことがわかった。
条件は一緒だった。そのポップコーンは無料であり、しかし湿気ていて不味かった。
無理して食べる必要もないし、残すことに罪悪感もなかった。
それでも、大きな容器を与えられた方がたくさん食べる、という結果が何回実験しても得られた。
このことから、その人の意志や考えなど関係なく「容器の大きさ」という環境だけで、人の行動は変わることがわかった。
人間の問題に見えても、実は環境の問題であることが多い
車で道を走っていて、急に割り込まれたらイラっとすると思うが、それは果たしてその人の問題でしょうか?
大事な約束に20分も遅れてハンドルを握れば、誰だって乱暴なドライバーになる可能性があるのではないでしょうか。
このように「人間の問題に見えても、実は環境の問題であることが多い」ということを
「根本的な帰属の誤り(distortions in the Attribution Process)」と本書では呼んでいます。
人は、人々の行動を「置かれている状況ではなく、人間性の問題にする傾向にある
一方で私たち人間には、人々の行動を「置かれている状況」ではなく「人間性」に帰属させる傾向があるそうです。
ここも大切なポイントだと感じます。
何か問題があったとき、「人」の問題と結論づける前に、その人の「環境」を考えることが大事だということです。
環境を整い、道筋が定まれば、象も象使いも旅が楽になる
だからこそ本書では、フレームワークの3つ目の要素「道筋」が重要だと主張しています。
相手を変えたければ、明確な方向を教えたり(象使い)、やる気や決意を高めたり(象)するのもひとつの手ですが、
しかし、単純に旅をラクにするという手もある、ということです。
急な下り坂を作って背中を押す。レールの摩擦を減らす。目的地まであと少しという看板をあちこちに掲げる、など。
簡単に言えば「道筋」を定めましょう!ということです。
人は変化に抵抗するもの?
そもそも論として、人間は変化に抵抗がある性質を持っています。
今までの経験則で生きた方が、あきらかに楽だからです。
しかし、変化を好む傾向もあります。
さて、これらは矛盾することでしょうか。
大森自身、このテーマはいつも考えているのですが(自分自身においても、他者においても)本書のはじめの方にバシッと書かれていたのでなかなかショッキングでした。笑
こう考える人もいるだろう。
人は変化に抵抗するもだと。
しかし、話はそんなに単純じゃない。
世の中では毎日のように赤ん坊が生まれ、親たちはどういうわけかその「変化」を喜ぶ。
この変化がどれだけ巨大か考えてみてほしい。
どうでもよい仕事を頼むために夜中に2回もあなたを叩き起こしたり、着替えたばかりの服によだれを垂らしたりする…そんな上司の元で働きたい人などいないだろう。
それでも、親たちはこの大きな変化を拒もうとしない。
むしろ、よろこんで受け入れるのだ。
子育てだけでなく、結婚、引っ越し、新たなテクノロジーや仕事。
日常に変化は多数ある。
その一方で、頭にくるくらい変えがたい行動もある。
スモーカーはなかなか禁煙できず、子どもはどんどん太り、夫は汚れたシャツを洗濯カゴにさえ入れてくれない。
つまり、難しい変化とたやすい変化がある、ということだ。
そして本書の回答がこうです。
子育ては非常に大きな変化だが、かなりの確率でうまくいく。
その理由はたいした謎ではない。
ひとつに、目的地が明快で鮮明だ。
誰もが子ども時代を経験しているし、自分の親や他人の親の行動を見ている。
つまり、何十年も子育ての間接的な教育を受けている。
したがって「象使い」は進む方向を知っているし、成功につながる行動もわかっている(それでも、目的地に着くまでには紆余曲折あるが)。
人々が子どもを持つ動機は知識ではなく感情だ。
希望に満ちた夫婦は子育てを楽しみにしているだろう。
自分の子供を持つなんてどんな気持ちだろうと思いを巡らすはずだ。
そのため、普段ならパニックを起こすような長く険しい旅にも「象」は喜んで旅立つ。
さらに、親というのは魅力的なアイデンティティだ。
自分の都合ではなく、子どものためを思って意思決定を行なうようになる。
実際、このアイデンティティはあまりにも強力なので、「象」は子どものためなら短期的な犠牲さえいとわなくなるのだ。
子供ができると、友人や家族は「変化を細かく」しようとしてくれる。
特に最初の数ヶ月はそうだ。
数週間はあなたの母親が手伝いにやってくるし、会社は育児休暇をくれ、親戚はあなたを見守る。
社会はさまざまな方法で子育ての「道筋」を形づくっている。
象も象使いも道筋も、子育てという大きな変化に対しては全面的に協力するようになっているのですね。
「生き物としての人間」として考えれば、うまくできるようになっているのは「種の保存」のために当然のことですが、
興味深いのが、逆に、それくらい原始的なことでさえ「象と象使い」のフレームワーク(仕組み)は適用できるということ。
この「象と象使い」の考え方の応用の広さを物語っていますね。
変化には一定のパターンがあり、パターンが存在しないのは変化を成し遂げる人たちのタイプ
まとめとして、本書は下記のように書いています。
変化には一定のパターンがあるのだ。
パターンが存在しないのは、変化を成し遂げる人たちのタイプだ。
本書ではCEOを何人か紹介したが、教授、看護師、中間管理職の人々、政府の役人、校長、親など、肩書や予算ではCEOにも及ばない人々もはるかにたくさん紹介してきた。
彼らの旅は、風変わりなものから壮大なものまでさまざまだった。
状況や変化の規模がちがっても、パターンはみな同じだ。
象使いに方向を教え、象にやる気を与え、道筋を描いた。
こんどは、あなたの番だ。
さあ、何を変える?
「象と象使いと道筋」に置き換えて、色々考えてみる
成功の体験も失敗の体験も、それぞれ多くの方が多く経験されていることだと思います。
その経験を「象と象使いと道筋」に置き換えて考えると、納得することが大森にはたくさんありました。
(今は身の回りの多くのことを、象と象使いと道筋に置き換える練習(?)をしています。笑)
たった今このブログを書いている自分に置き換えてみると、
かなりの長文になってしまったので、もっと小分けすれば良いのでは?と感じつつも、
長文であっても、全体像が見えた方が意味があると(象使いが)思いましたし、
何より自分の象がそれに向けて走り出していましたので、諦めず書き続けました。
読む方にはストレスをお掛けしますが、それを補える内容を目指しました。
冒頭にも書いたように、今後さまざまなケースでこのブログを引用しつつ、時間をかけて理解を深めていければと思っています。
本書が勇気づけてくれるポイントは、本当に多くの事例の中で、
「変化には一定のパターンがあり、変化を成し遂げる人たちのタイプにはパターンがない」
ということを教えてくれたところでした。
日頃から「人間の可能性」について考えていますが、どんな人でも変化する可能性を具体的に考えられるようになりました。
そして、自分自身の経験や周りの人の話を聞いていても、この「象と象使い」のパターンに当てはまることは多いと感じます。
人に何かを伝えようとして、うまくいかないとき
思わずその人のせいにしていないでしょうか?
実はその人が本当は戸惑っていたり、セルフコントロールができないくらい疲れ切っているのではないでしょうか?
その人の環境が原因かもしれません。
問題解決をするとき
「ブライト・スポット」に注目していますか?
「真実だが役に立たない」知識に惑わされていませんか?
考えすぎて「分析の麻痺」や「意思決定の麻痺」に陥っていませんか?
変化を起こそうとするならば
自分自身と相手の感情と協力できていますか?
アイデンティティ(何者で、どのような状況で、同じ状況にいる人々ならどうするか?)を考慮していますか?
失敗を覚悟できていますか?
解決策を大きくしすぎていませんか?
パーソナルトレーナー、インストラクターは人の身体と健康の変化をお手伝いする仕事
大森はパーソナルトレーナー、グループレッスンのインストラクターとして、人の身体や健康をより良く変化を促すのが仕事です。
そのために身体や運動の専門知識の他に、コミュニケーションなどの勉強もしていますが、
この本に出会えたことにより、今までのさまざまな知識や経験がまとまった感覚があります。
この体験をぜひシェアしたいと思っていますので、ご興味のある方はぜひご連絡ください。
まずはお話をしましょう!
そして、あらためて本書をお読みになることをオススメします。
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スイッチ! 〔新版〕― 「変われない」を変える方法 (ハヤカワ・ノンフィクション)
チップ ハース,ダン ハース,Chip Heath,Dan Heath 早川書房 2013-08-23
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超!長文になりましたが、最後までご覧いただき感謝いたします。
みなさまの人生の旅のヒントになれば幸いです。
2017/12/29 年末 良いお年をお迎えください