筋膜の可塑性と弾力性を知ることで、身体の動きは根本的に変わります

身体が動きにくくなるときは?
身体が冷えていると動きにくいことはみなさま経験的にご存じかと思います。
そして「身体を動かしていない状態」が続いても、身体は動かしにくくなることも経験されていることだと思います。
寝起きがしばらく動きにくいのは、当たり前ではあるのですが、
では、それはなぜでしょうか?(と、当たり前なことの理由を考えてみます)
キーワードは【筋膜】です。
筋膜の状態は温度に影響されます。
筋肉は【筋膜】に覆われています。
そして筋膜はコラーゲン繊維でできているので「温度」によってます。
(佃煮や煮こごり、豚の角煮、フカヒレなどの料理のイメージを持っていただくと分かりやすいかと思います)
運動をする前に「ウォーミングアップ」を推奨されるのもそのためです。
冷えると、筋膜自体が固くなるので身体は動きにくくなります。
そして、動かないことは身体は冷えますので、やはり筋膜は固くなります。
このように、身体の動きは「筋膜の性質」と関わっていますので、
その仕組みを知れば、より身体を動かしやすくなる、ということです。
- パフォーマンスアップ
- 運動効果向上によるシェイプアップやボディメイクの効率化
- 身体を痛めるリスクを軽減
といった効果が得られます。
では、筋膜の仕組みを考えるための【筋膜】と、
その性質である【可塑性】と【弾力性】を考えていきましょう。
筋膜、可塑性、弾力性とは
筋膜は「組織を区分け」する
狭い意味では「筋肉を覆う膜」といった意味を持ちますが、本来の「筋膜=Fascia(ファーシャ)」の意味は、
筋肉に限らず、骨、内臓、筋肉、脂肪、皮膚などの組織を区分けするものです。
場所により強度や密度、厚さなどは異なりますが、基本的にコラーゲン繊維が網目状になった構造になっています。
つまり、筋膜が固くなると、組織同士が癒着してしまうので動きにくくなってしまいます。
筋膜をしなやかに保つことは、身体の動きだけでなく、内臓や神経系の働きにも影響があるのです。
筋膜の状態の大切さを感じていただけますでしょうか?
筋膜は【可塑性】によって良くも悪くも形が変わる
「筋膜はコラーゲン繊維が網目状になった構造になっている」と書きましたが、この網目の密度は変化するものです。
温度が低くなるとこの網目が固まってしまうので、組織同士が癒着して動きにくくなります。
また、ずっと動かなかったり、圧をかけ続けると、網目が歪み変形します。
筋膜が機能的に働くために、筋膜に余計なストレスをかけないようにしましょう。
ちなみに「可塑性(かそせい)」とは、粘土みたいに形を変える性質をいいます。
今は脳にも可塑性があることがわかっていて「脳が鍛えられる」根拠になっています。
筋膜の自由度は【弾力性】によって変わる
筋膜のもうひとつの性質が【弾力性】です。
文字通りゴムのような伸び縮みする性質です。
弾力性のある筋肉は「しなやかな筋肉」ですし、前述の通り「皮膚も筋膜」なので、
弾力性を保つことは「肌質」を保つためにも大切です。
内臓機能や骨の質を保つにも大切です。
筋膜は、冷えと不動で不健康になる
筋膜は「冷え」と「動かないこと」で固くなります。
固くなった筋膜は、身体を不健康にしてしまいます。
具体的には、下記の理由で筋膜は衰えることを知りましょう。
デスクワークで座り姿勢がずっと続いていたら、筋膜は負の可塑性が働き、固くなります。
特に座っていると背中が丸まりやすいので、身体の構造が崩れた状態で固まるという、
かなり最悪な状態に陥る傾向にあります。
デスクワーカーの方はこのリスクの重要性を真剣に知っていただきたいと思います。
(それもこのブログを通してお伝えしていくのが自分の仕事だと思っています)
一見、良い姿勢をしていても、動かなければ筋膜は固くなります。
たとえば「良い姿勢」といえば背筋を伸ばした姿勢ですが、
見た目が良い姿勢でも、動かなければ筋膜は固くなり、身体の機能は低下します。
見た目が良くても身体の機能が低下していたら、それは「良い姿勢」とは言えませんね。
これは「良い姿勢」の定義が単なる見た目ではないことも意味しています。
年齢によって筋膜は固くなる傾向にありますが、あくまで傾向です。
加齢によって細胞の水分保持能力が下がるのは否めないことです。
しかし、それはあくまで「傾向」です。
運動習慣の重要なポイントは、年齢にかかわらず【筋膜の弾力性】は改善できるということです。
繰り返しですが、筋膜は筋肉だけの話ではなく、肌や血管や内臓や脳にも関わることです。
【筋膜の弾力性=若さ】と断言してもよいと思っています。
筋膜を健康的に保つことは現実的なアンチエイジングになることを知りましょう。
筋膜の【可塑性】と【弾力性】は、運動によって健康的になる
筋膜が固く歪み、弾力性を失ったとしても、それを改善することはできます。
動かすことで温まり【弾力性】が高まり、弾力によって動かされた筋膜は【可塑性】により整っていきます。
つまり「運動」です。
というわけで「運動」と筋膜に関することをいろいろ考察していきたいと思います。
筋膜の変化はじっくりと。
運動の際の注意点は、可塑性は「粘土のように形を変える」ので、
逆にいうと「急には形を変えられない」ということです。
急に動かすとそれこそ粘土のように傷つきます。
(こうやってギックリ腰などは起こります。気をつけましょう)
「筋膜の変化はじっくりと」
これ、キーワードです。
筋膜の変化は徐々に伝搬していきます。(時間がかかります)
いち部分の筋膜の動きが変わると、その付近の筋膜も影響を受けて(良くも悪くも)変化していきます。
このことから、改善していく方向だとしても、変化には「時間差」があることを知りましょう。
短時間では変化は少なく、時間をかけることで変化が大きくなります。
また、変化の途中で、感覚が変わることも知りましょう。
可塑性により感覚も変わるからです。
逆にいうと「慣れ」は悪い意味でいうと筋膜の固定化なので、常に「より良く」という気持ちを持っていた方が健全かもしれませんね。
緊張も筋膜を固くする
筋力が緊張しても、筋肉は固くなります。
運動が良いからといっても、力の入れ過ぎや、あるいはストレッチのし過ぎ、長時間の運動など、
過剰な運動はかえって逆効果になることも、筋膜の性質からわかることです。
このように、運動するにあたっても注意点はありますので、ただ運動するのではなく、
筋膜の性質を考慮して運動をしましょう。
(このあたりもトレーニングの原理・原則とつながるところですので、合わせて復習していただけると良いと思います)
健全な筋膜は、人間の健全な肉体だけでなく精神もつくる
まとめですが、筋膜の性質を知り、身体の機能に当てはめて考えていくうちに、
筋膜の性質は、人間の根本的な性質を表していると考えるようになりました。
身体も精神も、しなやかさって大切です。
その「しなやかさ」は抽象的な話ではなく、筋膜の【可塑性】と【弾力性】が
身体の組織の「しなやかさ」をつくっていると考えると、
それはそのまま「人間のしなやかさ」につながると思っています。
ライフスタイルを幅広くしなやかにするための、ひとつの手掛かりとして、筋膜の性質をを考えて、トレーニングやケアを取り組んでみるのはいかがでしょうか。( ̄▽ ̄)